漢方には二つの大きな流れがあります。一つは日本漢方もう一つが中医学です。
日本漢方の特徴は患者の虚実を厳密に判定し証を決めるところです。
虚実は患者の体格でほぼ決まります。がっしりとした体格であれば実証であり痩せた体格であれば虚証ということになります。
それにより使う薬も決まってきます。
これを随証治療と言います。
しかしこれには大きな欠点があります。
使用できる漢方薬が著しく制限されると言う点です。
虚証の人に実証の薬を使ってもほとんど問題はありません。
西洋薬に比べ漢方薬は虚証(優しい)の薬なのです。そもそも病気自体が虚実錯綜のことがほとんどなのです。
中医学は陰陽五行に基づく「弁証論治」の漢方ですが、勉強するとなるほど魅力的な理論ではまりそうになるのですが非科学的であることは否めません。
概念は参考にしながら新たなる漢方の展開を模索すべきでしょう。
私が現在行っているのは西洋医学的に疾患の病態をまず把握しそれに基づいた漢方薬を使用すると言う謂わば「病態漢方」の実践です。
病名漢方とは似て非なるものです。
実際の臨床現場では問診を丁寧に行い舌診を重要視しています。
舌は最も安定的に現在の体質或いは病態の一部を反映しています。
問診と舌診により八割がた診断出来ます。あと二割が永年の臨床経験により処方が決定されます。
漢方薬はすべての病気に処方が可能ですが、得手不得手があります。
高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病は西洋薬を第一選択とした方がよいでしょう。
むくみ、手足のしびれなど合併症が認められる時には漢方薬を併用した方がよい場合があります。
疲れやすい、頭が重い、肩がこる、ふらつくなど不定愁訴はストレスによる自律神経の乱れによることが多く漢方薬のよい適応となります。
その他腰痛、膝痛、関節痛など整形外科的領域の病気にも効果があります。
漢方薬といえども副作用がないとは言えません。
その為にも定期的な血液検査など必要となります。
西洋薬と漢方薬とが相互に補完し合う医療が最善と信じます。